安倍首相のシリコンバレー訪問

 

米日カウンシル評議員会会長ダニエル・オキモトによる分析

 

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スタンフォード大学で話す安倍首相 (写真提供:L.A. Cicero/Stanford News Service)

安倍首相のワシントンDC訪問、バラク・オバマ大統領との記者会見、そして米議会上下両院合同会議での演説は、政策面(新しい日米防衛協力のための指針やTPP交渉の進展)でも政治的な象徴性の面(日米同盟に対する日本のコミットメントの明確な意思表示)でも画期的なものでした。

安倍晋三首相のシリコンバレー訪問も、経済的な象徴性と政策面の双方で同様に評価されるでしょう。1989年に海部俊樹元首相がサンフランシスコに立ち寄ったものの、起業家精神とイノベーションの発祥地であるシリコンバレーを日本のトップが公式訪問するのは今回が初めてのことでした。

シリコンバレーで首相は伝説的なビジネス・リーダー(ジェリー・ヤン、ジャック・ドーシー、ジョン・トンプソン、マーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスク、ラリー・エリソン等)と懇談、スタンフォード大学では公式スピーチ及び非公式対話の機会をもち、また、当地を代表する企業(テスラモーターズとフェイスブック)やカリフォルニア大学サンフランシスコ校(ノーベル賞受賞者の山中伸弥博士と面会)を訪問しました。また、サンフランシスコでジェリー・ブラウン州知事とも会談し、680億ドルのカリフォルニア高速鉄道プロジェクトについて話し合いました。

スタンフォード大学でのスピーチでは、安倍首相は新しい政策イニシアティブ「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」を発表しました。この「架け橋」には、米日カウンシルと日本再建イニシアティブが立ち上げた「シリコンバレーと日本のプラットフォーム」で扱われている下記の重要な要素が取り入れられています。

**日本で最も有望な中小企業を選抜しシリコンバレーに招待して、集中的に指導することで、当該企業のグローバル化を促すといった、インキュベーター/アクセラレーターの役割を約5年間にわたって果たしていく。デザインや輸送、医療、ロボット工学、小売りなど日本が競争力をもつ分野の中小企業200社の育成を目標とする。

**「fin tech(ファイナンシャル・テクノロジー)」や「med tech(メディカル・テクノロジー)」といった多様な技術の分野で、日米の専門家が一堂に会し、特定の課題に焦点を当て、カンファレンス、報告会、会議、セミナーを開催する。

**バイオデザイン・センターやデザイン・スクール等、スタンフォード大学の最先端学際研究開発センターで研修とコラボレーションを行う。安倍首相は、東京大学、大阪大学、東北大学という日本の主要3大学の参加による、日本でのスタンフォード・バイオデザインセンター設立について言及している。

**創造性と破壊性、そして失敗やそこから立ち直るためのセカンドチャンスを受け入れるといったリスクをいとわない姿勢という、シリコンバレー特有のカルチャーを吸収する。

安倍首相は公式演説と非公式対話の両方で松下やソニー、ホンダの例を挙げ、過去の日本の起業家による功績について言及しました。首相は日本に揺るぎない技術力があることを誇り高く指摘し、これは大きな資産であり、政策や制度、文化を改革することで、その潜在的な能力の全てが開花する可能性があると述べました。

安倍首相の発言と全体的な姿勢から、経済が柔軟に、俊敏に、革新的に機動できるようになることで、日本がそのビジネス慣行を変革していけるのではないかという楽観的な観測が見受けられました。

首相の新しい政策イニシアティブである「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」は安倍政権と日本政府からの支援を全面的に受けています。このような支援の重要性はどれだけ強調してもしすぎることはありません。

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シリコンバレーのリーダーと話し合う安倍首相(左)

懇談会に参加したシリコンバレーの著名人7人はヤフー共同創業者ジェリー・ヤン、ツイッターとSquareの共同創業者ジャック・ドーシー、マイクロソフト会長ジョン・トンプソン、シンフォニー・テクノロジー・グループ創業者ロメシュ・ワドワニ、スタンフォード・バイオデザイン・センター創設者&ディレクターのポール・ヨック、アップル法務担当責任者ブルース・セウェル(直前に出席できなくなったアップルCEOティム・クックに代わって出席)、前駐日米国大使ジョン・ルースでした。

経験と知識豊かなシリコンバレーの先駆者たちが集結し、安倍首相に対し、どのようにすれば日本の技術・経済資産の可能性が引き出せるのか、進言しました。

シリコンバレーのリーダーによる、深い洞察力に裏打ちされた助言の一部を以下にご紹介します。

  • 日本は、「起業・イノベーション省」を創設すべきである。
  • 日本の大企業は、小規模なスタートアップ企業とシナジー効果を生みだすような関係の築き方について学ぶ必要がある。
  • 日本の大企業は、従業員のイノベーション創出と新会社設立を奨励する方法に重点を置くべきである。起業家精神とイノベーションは中小企業だけのものであってはならない。
  • 日本は(近年の減少を埋め合わせるため)アメリカへの留学生数を増やさなければならない。
  • モバイル端末による金融取引が可能となるよう、規制政策を緩和すべきである。
  • 失敗しても再起は可能であるというマインドを普及するためにも、安倍首相は、首相としての最初の任期は失敗に終わったものの、セカンドチャンスを与えられ、失敗から学んだため二度目は成功したという経験を語ることができるユニークな立場にいると言えよう。
  • 日本が何よりも変えなければならないのは、20世紀後半に何十年も続いた記録的な成功によって深く根付いたビジネスカルチャーである。適度なリスクを厭わない姿勢、迅速でスピード感ある対応、資本と労働力のより効率的な使用への転換が必要である。

シリコンバレーを訪問することで、安倍首相は日本の首相として初めて、日本をシリコンバレーの起業家精神と活力あるテクノロジーに幅広い面で結び付けることを優先していく姿勢を打ち出しました。安倍首相のこの訪問の意義を理解し、他の首脳も後に続くことができるでしょう。

4月30日のこの訪問が、将来の日本の首相や、その他の日本の国・都道府県のリーダーにとっての先例となることを期待しています。安倍首相は2010年代の終わりまで首相の座に留まられることになりそうですので、今回とはまた違う人々と共に再度訪問することになれば、それはまさに理想的な話といえるでしょう。

--ダン・オキモト

 

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